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今や福岡を代表する酒「田中六五」はどうやって産まれたのか? FUKUOKA

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日本ならではのお酒といえば、やはりすぐに思いつくのは日本酒。

全国各地に酒蔵が点在し、その数は1500近くあるといわれている。東北や関東甲信越に酒どころが集まっているというイメージは間違っていないが、実は全国で5番目に酒蔵が多いのは福岡だということをご存知だろうか。九州の酒どころというと、「鍋島」などに代表される佐賀がイメージされがちだが、福岡には佐賀のおよそ2倍の58軒の酒蔵が存在。

中田英寿さんが手がけた日本酒イベント「CRAFT SAKE WEEK 六本木」にも、九州の計10酒蔵が出店するなど、全国的にも徐々に九州メイドの日本酒の認知度が広まっている印象だ。

そのなかの一軒としてイベントに参加した白糸酒造の8代目が今回の主役。業界では異端とされる若き醸造家。白糸酒造を担う、未来の蔵元が考える、九州の日本酒が目指すべき未来とは。

老舗の8代目らしからぬ 独自の感性で生きる人

話しを伺ったのは8代目として、白糸酒造を切り盛りする田中克典さん。一見すると、アパレルショップか、飲食店のオーナーかと勘違いしてしまいそうなほど、オシャレな身なりで、32歳という若さもあり、老舗酒蔵の8代目という肩書きとのギャップに驚かされる。

ただ、東京農業大学の醸造科学科に学び、家業を継いでいることからも、その信念の強さを感じた旨を伝えると、「大学ではちゃんと勉強していなかったな〜(笑)」と、いきなり肩透かし。さすが日本酒業界の異端者だ。そのカジュアルでライトな雰囲気も助けて、程よく力が抜けたところで始まったインタビュー。ここから印象は一変した。

目指すのは日常に寄り添う酒 田中ブランドの誕生秘話

田中さんは大学卒業後、広島の酒類総合研究所を経て、現在の酒造りの基礎であり、エッセンスとなっている、佐賀県の「五町田酒造」へ。「東一」のブランドで知られる嬉野市が誇る酒蔵で、同社の取締役兼製造部長の勝木慶一郎さんから、かけられた一言がきっかけになった。

「糸島は80年ほど前から続く、酒造好適米『山田錦』の栽培が盛んな土地。『恵まれた立地で、自分で酒が造れる環境があるんなら、一度うちで酒造りを学んでみらんね』と、勝木先生にお声がけしてもらえたのが転機になりました」と田中さん。

7代目までは、酒造りの主導権は熟練の杜氏にお願いし、味の質を守り続けてきた白糸酒造だが、8代目を継ぐ立場となった田中さんが選んだのは自身が酒造りに携わり、主導権を握る道だった。今までのスタイルを一変させるリスクを恐れず、自分の舌、五感だけを信じた上の結論だ。

そんな田中さんが、勝木さんの元で学んだ酒造りの技と精神を頼りに、白糸酒造の新たな顔として造り上げたのが、「田中六五」。その名前には「田んぼの中にある酒蔵から、地元で収穫された山田錦を65%精米して作ったお酒」というストレートな意味が込められている。もちろん自身の名もブランドに掲げて。「勝木さんが手がけた65%精米の純米酒を飲んだときに、感動したのが、『田中六五』が生まれたきっかけです。勝木さんが手がけた逸品を超える酒を生み出したいとの思いから始めました。

醸造を始めた当初から、日常的に飲める純米酒で、『福岡の酒といえば“田中”よね』と言われるような、地元に根付く酒を作りたかった」と田中さんは語る。

まずは地場でのブランド化 そこから全国への展望が開ける

『CRAFT SAKE WEEK』で日本酒への関心の高さは感じたが、九州の日本酒は、やはりまだまだ東北などのブランドには勝てないことも痛感したと話す田中さん。

九州の日本酒が全国をターゲットに勝負する上で今後必要だと思うことを尋ねると、「各地の酒蔵が、それぞれのブランド力を高めていかなきゃいけないと思う。もちろん、それはうちも同じです。まずは地場に根付いたお酒になることができれば、きっと自ずと都市圏からも注目されると思う。

そんなお酒を各県で増やしていければ、きっと九州は全国有数の酒どころになれる。おいしいお酒を造りたいという気持ちは東北や関東甲信越に負けていないから」と、最初に会ったときのイメージからは想像できない、熱い思いをぶつけてくれた。そんな田中さんの思考は工場の設備にも表れている。

昨年、全面的に改装した工場は、ハネ木搾りなど昔ながらの技法は残しつつ、味の数値化、醸造過程のデータ化など、最新の技術を随所に導入。「目指すのは、多くの人に評価されるおいしいお酒であり、その味をぶらさないこと。

そのために利用できる技術はフルに活用する」という、田中さんの持論。今まで築いてきた伝統はもちろん大切に、ただ執着しすぎることなく、消費者ベースでベストだと思うことを躊躇なく選択する勇気。この考え方がスタンダードになれば、日本酒はもとより、モノづくりのこれからはもっと大きく変わっていくはずだ。

 

Shiraito Sake brewing

 

伝統の技と最新のテクノロジーを融合させた、次世代の日本酒を生み出すラボ。

(写真上)昔の酒造りの名残であり、シンボル的な煙突を横目に建つ、コンクリート打ちっぱなしの醸造所。 (写真下左から)白糸酒造の代名詞ともいえる「ハネ木搾り」の木製搾り機。てこの原理を用いた原始的な機械で、重りには石を使用。炭酸ガスを抜きながらじわじわと日本酒を搾り出していく。味のバランスを数値化し、安定した日本酒を造り出す検定ルーム。さながらラボのようなたたずまいだ。田中さんの酒造りのモットーとこだわりが詰まっている。新しい醸造所にして、仕事の効率も上がった。

 

Sake Line Up

(写真左から)山田錦を65%精米し、醸造した「田中六五」。現在、博多区住吉にある「住吉酒販」でのみ取り扱う。色違いのラベル3種は、同じく糸島産山田錦にこだわる、白糸シリーズ。写真左から45%精米の純米吟醸酒「白糸45」、55%精米の「白糸55」、70%精米の「白糸70」。特徴的なラベルのデザインは、田中さんの弟で、デザイナーの公二さんが担当。

左から

田中六五(720ml) / ¥1,501(税込)

白糸45(720ml) / ¥2,700(税込)

白糸55(720ml) / ¥1,620(税込)

白糸70(720ml) / ¥1,166(税込)

 

白糸酒造

福岡県糸島市本1986

☎092.322.2901

[ 営 ]8:00~17:00 [ 休 ]不定休

http://shiraito.com

BOND 編集部

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