菊鮨、一貫に確かな技術と寿司哲学を込めて FUKUOKA
店があるのは春日公園そばと、決して行きやすい立地ではない。ただ週末ともなると、数週間先まで予約で満席。そこにはわざわざ足繁く通いたくなる“味”がある。
寿司を一手に握るのは店主・瀬口祐介さん。
博多の名店「高玉」などで10年の修業を経て、次に選んだのはモナコ公国の五ツ星ホテル「メトロポールモンテカルロ」の副料理長・指導者だった。
このキャリアを聞くだけでも、来店前から期待は高まる一方だが、同店の魅力は瀬口さんが弱冠34歳と、まだまだ進化を続ける若手だということ。
若いゆえに何事にも勤勉で、感銘を受ければ、どんどん吸収する。
その姿勢は寿司をいただくと実感。
博多の寿司は総じて魚の鮮度をそのまま活かすが、同店の場合、鮮度の良さに“寝かす”“昆布締め”などの一手間を加える。
そのネタは驚くほど旨味が凝縮し、食感もさばきたてと比べると同じ魚介とは思えないものばかり。
シャリも酒粕が原料の赤酢を厳選する伝統的な江戸前式で、キリッとしながらも米由来の自然な甘味が広がる。
なにより人肌ほどの温かみを帯び、米の粒が立つという表現がふさわしい食感で、口の中ではらりとほどけていく。
食べてみないと分からないとは常套句だが、申し訳ない。同店の寿司を表現するにはこの結びしか出てこない。
10日間ほど寝かせて、余分な水分を抜き、旨味を凝縮させたアオリイカ / 鯛の昆布締め / エビ / 千葉の銚子沖で上がった、脂のり抜群の金目鯛 / ダシ醤油に漬け、寝かせることで味わいに奥行きが出たマグロ / 藁の煙で燻したサワラ / コハダ / 昆布ダシの旨味が染み込んだサヨリ / 卵液にエビのすり身、山芋を混ぜ、2時間ほどじっくり低温で焼き上げた玉子 / 脂ののり具合などにより、蒸し、焼きと調理法を変えるアナゴ。店はイチョウの一枚板のカウンター席のみ。「シャリとネタのバランスを最も重視している」と話す店主・瀬口さん。
菊 鮨
福岡県春日市春日公園3-51-3
☎092-575-0718(受付時間11:00〜22:00)
[ 営 ]12:00〜14:00(1部制)、18:00〜20:30
(最終入店)※土日夜は2部制
[ 休 ]月曜日
おまかせ鮨(昼)4,500円(税抜き)
おまかせ(夜)10,000円(税抜き)