[BOND GIRL] 興味の無い理由。 BOND GIRL
BOND GIRL by 保田 優希
いつもどことなく無関心に見える彼女。普段、街をあるいていても、なにかを尋ねても、その時は笑顔で僕に答えてくれる。でも、僕は知っている。ふとした瞬間に彼女は、無関心というか、興味がないな……といった寂しい顔をする。
その日は、広島市内での買い物を終えて、彼女と食事をした後、知り合いのバーへと誘った。二人ともお酒を進んで飲む方ではないので、こうして二人で飲むことはめずらしいと言える。ましてや、大人の隠れ家といった雰囲気のバーに来るなど、年に数回もないだろう。印象的な店内の入り口をくぐる時、
「なんだか凄いね、普段こんなところに来ないから、新鮮。」
そう言ったものの、言い終えた彼女の表情はいつものごとく、無関心な横顔だった。
「いや、たまにはさ、こういうのもいいんじゃない? 別に学生でもないし、少しは大人の真似事でもしてみようかなってね。」
「確かに。いいかも。」
無関心な横顔は続いていた。
マスターは、程よく距離をとって、淡々と業務をこなしていた。僕と知り合いではあるものの、こういった気遣いが彼の魅力だなと思う。
「で、何か聞きたいことでもあるの?」
ふいに、彼女はそう聞いてきた。こちらから切り出そうとしていた僕は焦ってしまって……
「俺のこと嫌いかな?」
「どうして?」
「いや、いつも凄い無関心な顔してるなってさ。俺に興味ないのかなって。」
彼女は笑顔とも真顔ともなんとも言えない、ただ真剣な表情で、
「あぁ、なるほど……。嫌いなんかじゃないよ。興味ないことないよ。ただね、無理に私を楽しませようとしなくていいのにって思ってるだけ。私は二人で居れたらそれでいいの。ちょっと手をつなぐだけでいいの。ぼ~っと空を見れたらいいの。だから、他のことには興味ないだけ。あなたが他のことにばかり気を使うから……。」
どうやら、僕が一番、彼女に無関心だったようだ。たまに飲むお酒のせいか、僕の鼓動は落ち着かなかった。