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貴乃花 光司 インタビュー INTERVIEW

“「やる」と決めたら勝算を考えず、覚悟を決めて進め!”

現在、13人の弟子を抱える相撲部屋の親方として、
さらに日本相撲協会の理事の一人として日本全国を奔走する貴乃花親方。
平成の大横綱と称されながらも、その影で幾多の苦難と戦った貴乃花。
彼が我々に伝えた「がんばるな、踏ん張れ」という言葉の真意とは。

——朝稽古を初めて拝見させて頂きました。聞きしに勝る迫力ですね。そんな国技・相撲を通じて、貴乃花親方が伝えたいこととはどんなことでしょうか。

貴乃花光司(以下、貴乃花) 多くの人に相撲=国技と思って頂いているかと思いますが、実際のところ相撲は国技として認定されている競技ではないんですよ。ただ、相撲というのは神道の神事の一つで、その教えを汲んでいるのが相撲道です。古代より、慈しみを重んじる『大和心』を持つ日本人は、相撲道という、礼に始まり礼に終わる、目上の方を大事にする、きちんと挨拶をするなどが一般家庭でごく当たり前に行われていて、それを体型立ててすることなんです。相撲道を志すものの基本は「強く優しく力持ち」で、お困りの方がいらっしゃったら馳せ参じるということが相撲道そのものです。いろんな場面で力士と触れ合って頂く中で、相撲道の本質を少しずつでも皆様に知ってもらいたいと思います。

——そんな相撲道をより多くの方に伝えるため、親方はさまざまな活動をされていました。従来なかったようなサービスや露出もされていましたが、来春も同様またはそれ以上の動きをされる予定でしょうか。

貴乃花 もちろんです。相撲もサービス業として成り立たなくてはいけません。例えば前回の大阪場所では、女性ファンに向けて和装で相撲を見ようという呼びかけを行い、また私自身も、場所中15日間毎日1時間程会場玄関でお客様のお迎えをしました。多くの方により楽しんで頂ける仕掛けは、いろいろチャレンジしたいですね。相撲はお座敷で食事をしたりお酒を楽しんだりしながら観戦ができるエンターテイメント。これほどエンターテイメント性に長けた日本の伝統芸能は、もしかすると大相撲だけなのかもしれませんね。現在、日本人の横綱がいないということもあり、日本人の相撲離れが指摘されていますが、我々指導者が今出来ることを精一杯努めて行くことが、再び相撲ファンを呼び戻す力となると信じています。

——先ほどの朝稽古を見て印象的だったのが、稽古中はかなり厳しく接していた皆さんが、終わった瞬間和やかに笑い合っているという……。

貴乃花 やはり、その切り替えはとても大切ではないでしょうか。最近の人は切り替えを上手にできない人が多いように感じます。相撲の場合、土俵に上がった時の緊迫感はどんなことより強く感じます。世界中探しても、出だしから頭と頭がぶつかり合う競技なんてあまり見ないんじゃないでしょうか。それぐらい油断が命取りになる競技なんです。そういった緊張感の中で精神力を鍛えるのが相撲の鍛錬です。相撲の稽古とは「古きを知り新しい自分を作り上げること」ですから、スポーツのトレーニングとは少しニュアンスが異なります。相撲の稽古場には神道の考えや仏教の考えが入り込んでいる場所なので、稽古が終われば家族の時間に戻ります。それがオンとオフの切り替えの訓練にもなっているのかもしれませんね。

——現在はあらゆる業界で作業や行程の単純化が求められています。しかし拝見した稽古では、そういった近道をしているようには見えませんでした。

貴乃花 日本文化的な鍛え方というのは、やはり日本人に適していると思います。相撲というのはそれを長年続けながら強靭な力士を育てているので、例えば他のスポーツのようにすべてを西洋式に合理化してしまうと相撲本来の軸がずれてしまうでしょう。体力や技術といった表層的な部分だけでなく、(相撲を通して)いざと言うときにきちんと集中できる精神力が備えられるよう弟子たちを指導していきたいですね。

——指導というと、多くのビジネスマンが部下の教育に頭を抱えています。親方が考える、部下への教育方法論を教えて頂けないでしょうか。

貴乃花 指導する側が、生き方そのもので弟子や部下に示してゆくことだと考えています。私は毎朝5時頃から自室で1時間はストレッチをして、体を十分に温めほぐしてから稽古場に下ります。指導する側も十分な準備運動をしてから稽古に臨むということです。弟子が四股を踏むときは一緒に踏みます。師匠が目の前で踏んでいたら、彼らも手抜きはできませんからね(笑)。プロの世界は言葉より目で覚えろ! と言われます。そういう意味でも師弟が寝食を共にし、常に手本となる者が近くに居る相撲部屋のようなシステムは素晴らしいと思います。自らの生き方から弟子たちが何かを感じ、受け取ってくれていると信じて指導しています。

——親方は弟子たちを指導される際、「踏ん張れ」を使うと伺いましたが、親方こそさまざまな苦難をそれこそ踏ん張って乗り越えられました。その精神力の源は何なのでしょうか。

貴乃花 まずは周りの話をよく聞いて、自分で吟味し、そしてそこから答えを出したなら、それについての意見は一切気にしないようにしています。つまり、やると決めたことは最後までやり通すということです。その考えは一貫して変わりません。また、勝算を考えないというのも重要。人は二人以上いれば、その半数は敵になってしまうと私は思います。結果が必ず求められる昨今ですが、まずは本当にやりたことに向かってどんな状況でも諦めずに進むことが大切なんです。結果は後から付いてきますから。それに加え、私を含めた30〜40代の人たちは、今一番踏ん張らなくてはいけない時期だと考えます。世界情勢が不安定な中、先輩も後輩も見なければいけないこの世代が信念を持って踏ん張らなければ、日本は間違った方向に行ってしまう……それぐらい今の日本には危機感が漂っています。私たちの世代が民族を守るという強い信念を持ち、一度決めたらテコでも動かないと踏ん張ることで、今後日本が50年、100年かけて他国に類を見ない民主主義国家を形成できるチャンスを手に入れることができると信じています。

——では、地方で踏ん張る私たちに、親方が感じる東京と地方の違いを教えて頂けますか。

貴乃花 東京は家も部屋もある生活の基盤の場所です。当然、応援してくださる地元の方もたくさんいらっしゃいます。ただその一方で、地産地消という食文化が失われているように感じます。全てが機械化されているというか。地方のように、住んでいる場所でその土地のものを食べることは大切だと思いますね。私は巡業などで地方に行くことも多くありますが、その土地で新鮮な食材を食べられる、それはとても幸せなことですし、自分の体が喜ぶのが判ります。それに何より人の温かさや情深さを感じます。そういうあったかい部分をずっと残していってほしいですね。

——最後に今働く全ての人に親方からご指導をいただけますでしょうか。

貴乃花 指導ですか(笑)。そうですね。まずは、どんな時でも踏ん張らなければいけないと思います。私は弟子たちにも「がんばれ」とはほとんど言いません。無理をして「がんばる」のではなく、信念を貫くために「踏ん張る」です。それと、いい加減にするのではなく、良い加減を見極められるようになることが大切。これと決めたことを突き通す、そんな強い意志で自分の夢に向かって踏ん張っていきましょう。(BOND FUKUOKA 05掲載分)

[ 貴乃花 光司・タカノハナコウジ ]
貴乃花部屋親方。1972年生まれ、東京都出身。1988年の初土俵から2003年の引退までに、幕下で2回、幕内では22回の優勝を果たす。横綱への昇進は1995年(第65代横綱)。2010年の理事就任に続き、2012年の理事選でも再選。現在は大阪場所担当部長として、従来にはないさまざまなユーザーサポートを提案・実践している。

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