九州・沖縄発 一流のオトナを諦めないあなたに贈るフリーマガジン変革をあきらめないオトナたちへ BOND

九州・沖縄発 一流のオトナを諦めないあなたに贈るフリーマガジン変革をあきらめないオトナたちへ BOND

内藤 誠治 インタビュー INTERVIEW

“日本の技術や思想をイノベーションすることは、結果的に文化を守ることになる。”

昨年4月、平安遷都以来から工芸の歴史を持つ京都で、世界が注目するビーチサンダル『JOJO』が発信された。発信したのは、約140年の歴史を持つ和装履物の老舗『祇園 ない藤』の5代目当主の内藤誠治氏。自らも職人として活躍する内藤氏がどのような経緯で『JOJO』を生み出したのか、そして『JOJO』を通じて世界にどんなメッセージを発信しようとしているのかを伺った。

——まずは『祇園ない藤』についてお伺いしたいのですが、御社の考えの「履物は、花を生かす器」というのにとても興味があります。この言葉の意味とはどういうものですか。

内藤誠治(以下、内藤) それは先代である「ない藤」4代目当主の言葉ですが、例えば花器やお料理の器によって、載っているものの印象は変わりますよね。それは人も同様で、同じスーツを纏われていても、足元が革靴かスニーカーかでずいぶんと印象が違います。さらにこの言葉には印象の変化に加え、履物とは拠るべき「座」としての役割りを果たすものという考えも込められています。つまり、置かれる場所や季節によって花器を変えるように、人も対峙する人や場所と調和するためには履物をきちんと選ぶ必要があるということです。もし総理大臣に取材する場が与えられたとして、あなたはスニーカーで行くことができますか? 当然ですが例えスニーカーで取材をしても罪にはなりませんし、もしかすると注意すらされないでしょう。それでもスニーカーだとかなり居心地が悪い。それは履物が自分を表現するミニマムなデバイスだからではないでしょうか。私たちが履物を大地と人、人と人を調和する“器”だと考えているのはそういう視点から履物をみているからなんです。

——その和装履物に対する想いをもっと世界中に伝えるツールとして昨年誕生した『JOJO』は、経産省のクールジャパン戦略推進事業のコンテンツの一つに挙げられ、ニューヨークやミラノでも高い評価を得ています。この評価は、『JOJO』が世界とコミュニケーションできるツールとして開発されたからなのでしょうか。

内藤 いえ、まったく逆の発想ですね。『JOJO』は世界に発信するために開発したのではありません。履物の新たな市場を創るために開発した結果、世界に発信できるものができた……という感じですね。例えば、売りたいものを作る時は価格帯や消費者のニーズなどを考えて作ります。しかしこれらは不確定な未来をイメージしながらの作業となります。今回発表した『JOJO』は、和装履物の“自分を表現するミニマムデバイス”“着脱しやすい快適性”といった既存の特性を現代風に積み上げたアイテムです。そうして完成させたモノが結果的に世界にも発信できるデザインや機能性を備えていたということなんです。市場を創るためのモノ造りのロジックは、アート作品の創作に近いのかもしれませんね。

——『JOJO』は「ぞうりからビーチサンダルへの架け橋」と表現されていますが、ビーチサンダルとの相違点を教えてください。

内藤 まず共通点は、やはり着脱のしやすさや快適性ですね。これを表現するのにビーチサンダルはとてもキャッチなワードだと思います。ビーチサンダルと異なる点は「品」の有無。ビーチサンダルは気軽さが利点ですが『JOJO』は履いた瞬間、背筋がのびて凛とするような感覚があります。これは和装履物でも表現されている感覚ですね。

——では最後に日本の伝統を内藤氏はどのように守りたいと考えられていますか。

内藤 伝統を守る……というのは少し違う気がします。あえて守るという表現を使うなら、『JOJO』のように日本の技術や受け継がれた思想をイノベーションして発信することこそ日本の伝統を守ることになるのではないでしょうか。今、自分がしていることは先代から受け継いだことを表現しているに過ぎません。そして私の考えは次の世代がまた受け継いでいくのでしょう。こうして、技術や伝統は代々続いていく。継続する大切はそこにあるのだと私は考えます。(BOND FUKUOKA 10掲載分)

[ 内藤 誠治・ないとう せいじ ]
140年の伝統を誇る、和装履物の老舗「祇園ない藤」の5代目当主でありながら、自らも職商人(商人でありながら職人として手仕事をする形態)としても活躍。また一方で、各地のトークイベントや講演会などのゲストとして登壇し、足元の美について発信している。さらに「祇園ない藤」の新ブランド「mana プロジェクト」を立ち上げ、140年で培った和装履物の技術を世界に発信。ものづくりの新たな可能性にチャレンジしている。内藤氏が手がけた京ぞうりは2000年に京都デザイン優品を受賞。

BOND OFFICIAL
BOND OFFICIAL

記事一覧

BOND GIRL