九州・沖縄発 一流のオトナを諦めないあなたに贈るフリーマガジン変革をあきらめないオトナたちへ BOND

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中岡 生公 インタビュー INTERVIEW

“創業90年。和菓子の名門を率いるリーダーの信条は、自然体。”

——鈴懸と言えば、和菓子ブランドの中でも突出した存在ですが、歴史を守り、伝統の技を継承して行く上での苦労などはありますか。

中岡生公(以下、中岡) 言葉で説明するのは難しいですね。私は今から20年ほど前に鈴懸の一員として加わりましたが、受け継いで行くべきものは何か? ということは、先代や先々代、職人達の背中を見ながら自然と身について来たものですから。

——最近では和風モダン的なイメージを打ち出した和菓子を目にする機会も増えて来ました。そのような競合の存在を意識することはありますか。

中岡 正直、特に意識していません。先ほどの答えと若干重複するかも知れませんが、我々としては“芯”の部分を変えず、これまで通りのことを地道に積み重ねて行くだけです。 腕の立つデザイナーやクリエーターがいれば、目を引く店舗や包装ケースなど、いかようにでも作ることはできます。ただ、それらは美味しい和菓子、という絶対的存在があってこそ初めて意味を成すもの。当たり前かも知れませんが、まず中身ありき。見かけが先ということは断じてありません。ちなみに、この本店のデザインには複数の著名な作家の方々にお手伝い頂いています。

——てっきり、一人のデザイナーによるものかと思いました。

中岡 入り口の暖簾、内装、家具のコーディネイトと、作家はすべて別です。私が作家の皆さんにお伝えしたのは、ここはお客様が楽しい気持ちで和菓子と出会うための場所、ということだけ。偏った個性や造形だけが目につくようなお店は必要無いと。結果、すべての調和が取れたお店に仕上がったと思います。

——若くして和菓子の老舗店のリーダーという重責を担われたわけですが、心境的な変化や日頃から心掛けていることなどはありますか。

中岡 う〜ん、何でしょうね(笑)。いつでも自然体ですよ。従業員の皆さんも一人一人が考え、工夫しながら業務に取り組んでくれていますので、私の方から改めて「ああしろ、こうしろ」と言ったような覚えは、ほとんど無いですね。社風も結構自由ですよ。僕自身が感じる変化ですか? 分かりません。それは自分で言うことではなく、周りから判断して頂くことでしょう。

——今号ではサブテーマを「リーダー論」としていますが、これから組織のリーダー的な立場を目指す若者たちへ、アドバイスを頂けますか。

中岡 素直に思ったこと、感じたことをやってみることですね。成功するか否か、なんてことは誰にも分かりません。当たり前です。若さは最大の武器。一歩踏み出すことを躊躇せず、思い立ったことがあればまず、行動してみることです。

——改めてお尋ねしますが、和菓子とはどういう存在でしょうか。

中岡 和菓子は大切な我が国の文化だと思います。それは、時間を楽しむ心のゆとりとでも表現したらいいでしょうか。和菓子そのものの造形にだけ、文化があるのではないと思うのです。大切なのは、それを食するために費やす時間です。お菓子を食する時間。お茶を頂く時間。そしてそれを人様に贈ったり、贈られたりする。この一連の過程すべてが日本の文化と言えるのではないでしょうか。 単に空腹感を満たすだけなら3度の食事で事足りるわけですから。外国からのお客様は非常に多いですね。もちろん、味は国内向けと何ら変わりません。外国人だから、日本人だからと、作り手側の勝手な先入観で味をかえることはありません。和菓子に限らず、芯となる部分を意識としてしっかり持っていれば、国内外を問わず良い物は良いと思って頂けるはずです。

——鈴懸が生まれた博多・福岡は全国でも住みやすい街として人気です。反面、これぞ「博多・福岡」と打ち出すべきものは何か? と問われた際、その答えに窮することもまた事実だと思いますが、この点については。

中岡 この土地の魅力は「人」と「空気」の織りなす「時間」ですよ。それは2泊、3泊という単位ではなく1ヶ月、1年居てこそ感じられるもの。名所、名物だけでなく、この土地の空気、時間を楽しむ。そんなアピールの仕方があっても良いのでは。転勤で福岡に住まれた方々が、「この街、なんかイイね」と感じる。地元振興のヒントは、そんな何気なさの中にこそ隠れているのでは? これだけ情報に溢れた現代ですから、旅行好きの皆さんの中にも観光ガイド的な旅に飽きて来た方は多いと思いますよ。大切なのは、時間に追われながらまわった名所の数ではなく、その土地で過ごした時間。 本店を現在の場所に移し、カフェスペースを併設したのも、時間へのこだわりから。販売スペースだけではどんなにゆっくり接客応対したくても5分が限界。ここなら30分、1時間と、ゆっくりお過ごし頂くことが出来ますから。(BOND FUKUOKA 03掲載分)

[ 中岡 生公 – なかおか なりまさ ]
福岡市博多区出身。鈴懸に入社後、商品やパッケージをガラリと変え現在のスタイルを確立。和菓子・洋菓子問わず菓子はもちろん食全般に興味があり、プライベートでも食べ歩き、飲み歩きを楽しむ。
www.suzukake.co.jp

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