九州・沖縄発 一流のオトナを諦めないあなたに贈るフリーマガジン変革をあきらめないオトナたちへ BOND

九州・沖縄発 一流のオトナを諦めないあなたに贈るフリーマガジン変革をあきらめないオトナたちへ BOND

酒井田柿右衛門 ラストボンド INTERVIEW

“不純物の存在が日本的な美を形成する”

毎回、BOND編集部が各界のオピニオンリーダーを迎え、混沌たる世の中で、
この福岡にある我々はどうあるべきか?を問う、BONDのラストページ。
今回は、人間国宝の第十四代酒井田柿右衛門氏

17世紀前半から350年以上続く、佐賀有田の陶芸家・酒井田柿右衛門。その歴史を一身に受け継いだ第十四代酒井田柿右衛門は、どんな想いで家督を継いだのか。また、何を後進たちに伝えようとしているのか。本人に直接伺ってみた。

以下、酒井田柿右衛門氏 – 私は酒井田柿右衛門の家に生まれた訳ですが、家督を継ぎたいとは当初思っていませんでした。大学を卒業したころ、2・3回家出の真似事もしていました(笑)。卒業して佐賀に戻っても何か居辛くて、東京の友人の家に転がり込んだりして。本当に家出をしたいわけではないのですが、やはり柿右衛門の名前に戸惑っていたんでしょうね。迷っていたというか「ちょっと待ってくださいよ……」という気持ちでした。ただ、熱心に戻ってこいと言ってくれた祖父(第十二代柿右衛門)が、陶芸に使う絵の具や道具を全部私に渡して「絵は全部お前がやれ!」といったのがきっかけで、本格的にこの道を歩み始めました。

祖父が絵の具を私に譲ってくれた当時、世の中のいろんなものが近代化していて、絵の具や土といった(焼き物の)原料も新しくなっていったんです。ただ、全てが新しくなりキレイになりすぎて、江戸の始めから伝えられた作品の持つ深い味が化学的に処理され、なくなってしまいました。どこまでも新しくキレイにするというのは西洋的な美意識かもしれませんが、日本人の美意識ではありません。どちらが良い悪いではなく、古くからの技法を伝え残していくという考えが日本の美意識の中にはあり、文化庁からの文化財の指定も古来の色や技術を守り伝えるよう指定されています。技術の発達により不純物をなくした現代の原料は、特に(日本の)美術や工芸の世界ではキレイすぎるんですよ。不純物とひとことで言ってしまいますが、それは地球が誕生して何十億年もかけて蓄積され熟成したものです。それを劇薬を使ってなくしてしまうというのはどうだろうと思ってしまいますね。工芸の世界では不純物は貴重な宝なんです。豊かな表情を出してくれる元素といっても過言ではありません。不純物=いらないものというイメージを皆さんお持ちかもしれませんが、とても大事なものではないかと私は思います。それは工芸の世界だけの話ではありません。今はなんでも精製してキレイにしようとしていますが、私はそんな状態を「キレイになりすぎて美しくない」と表現しています。

日本人は「美」をキレイとも美しいとも解釈しますが、西洋の人はキレイとしか解釈できません。不純物を良しとした美は、日本人しか持ち得ない感覚だと私は思います。これから美術や工芸に携わる人たちはもちろん、全ての若い世代に日本人らしく誇りを持って日本の「美しさ」をきちんと表現してもらいたいですね。 最後にビジネスの現場でもがきながら、それでも頑張る人たちに一言という言葉に「日本は自然の美しい国です。その自然と共存しながら生きていくこともこれからの世代には必要だと思います。自然と交わり、純粋なものも不純物も全て受け入れることで、きっと新たな発見ができますよ。」と答える。

異物を排除せず、受け入れることで美を創造する陶芸家・第十四代柿右衛門。
異物を飲み込みながら350年以上の歴史を紡ぐ彼の姿こそ、今のビジネスマンが目指す道ではないだろうか。
(BOND FUKUOKA 05掲載分)

[ 酒井田柿右衛門・さかいだかきえもん ]
1934年、13代目酒井田柿右衛門の子として生まれる。絵付けの基礎となる部分を会得するため多摩美術大学日本画科で日本画を学び、卒業後帰郷して12代・13代柿右衛門に師事。2001年に重要無形文化財「色絵磁器」の保持者として認定される。その後、後進の育成にも力を入れ、現在も大学で教鞭を取るなど勢力的に活動している。

BOND OFFICIAL
BOND OFFICIAL

記事一覧

BOND GIRL