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坂本 龍一 インタビュー INTERVIEW

“ボクのECOはエゴです。
地球環境より自分環境を考えて取り組んでいる。”

音楽家として、そして近年では環境問題に関する活動も精力的に行っている坂本龍一氏。 今回はそんな坂本氏に彼がどのようにして環境問題を考えるようになったのか、 そして企業が環境についてどう考えるべきなのかをワールドワイドな視点で話してもらった。
環境やECOなどの話をすると兎角、怪しいと感じられることが多い。環境問題が世界的な課題となっている現代ですらそんな状況だ。そんな状況下にも関わらず、1994年から環境問題に取り組んできたのが「世界のサカモト」と称される坂本龍一氏。坂本氏が環境に興味を持ったのは、自身の体調の変化が原因だったとか。また彼は「ボクのECOはエゴなんです」と話す。坂本氏が言う「ECOはエゴ」とはどういう意味だろうか。その真意を伺ってみた。

——私たちの世代はYMOに始まり、映画音楽やダウンタウンさんと組まれた『ゲイシャガールズ』など、時代に急先鋒で切り込む音楽家として坂本さんを拝見していました。そんな坂本さんが環境問題について世間に言及したのはいつ頃でしょうか。

坂本龍一(以下、坂本) 今からちょうど15年前の1999年に、オペラ『LIFE a ryuichi sakamoto opera 1999』を手がけたのがきっかけです。そのオペラのテーマが「共生」なんですが、当時は今よりも保守的だったこともあり、長年ボクのファンだった人でさえ「サカモトはちょっと頭がおかしくなったのか……」と言われました(笑)。

——では、なぜ環境問題に興味を持つようになったのですか。

坂本 当初のきっかけは自分のためです。40歳を過ぎると、だんだん徹夜できなくなったり、お酒の量が少なくなるといった老化を自覚するようになりますよね。ボクはわりと頑強な人間だったのですが、その時はじめて自分が食べてきたものや住んでいる環境について考えました。自分が毎日触れているものやカラダに入れているものの大事さに気がついたんですよ。自分のカラダと環境は一体だ……と考えるようになりました。書籍などで環境について学んだのはそれからですね。ボクは「ECOはエゴ」と話しているんですが、地球や環境といったとても遠いところを考えてしまうと意識しにくいと思うんです。でも自分のため、もしくはかわいい自分の子どもたちのために考えるとECOはより身近になります。だからECO=エゴでいいじゃないかと。誰もが病気にはなりたくないし、おいしいモノも食べたいし、キレイな空気もすいたいし、安全な水を飲みたい。つまりそういうことなんだと思います。

——『モア・トゥリーズ』(坂本龍一氏が代表となり2007年に設立した国内外での森林整備および植林、森林保全を行う団体)での活動もそんな環境問題に対する取り組みですよね。

坂本 森林に関しては、環境問題に関して言及していくうちに、森の保全もやらなきゃいけなくなった……という感じですね(笑)。ボクは木や森に全く縁がなく知らなかったんですが、木が一本育つのに50年以上の歳月がかかるんです。ボク自身も地方の山林に伺いそこに従事する方にお会いしますが、ほとんどの方が高齢者というのが現状。そして彼らはその自然と向き合いながら生活するしかなくて、どこにも逃げ出せないんです。それを知ったとき、これは大変なことをしたな……と思いましたね。ボクも逃げ出してはいけないぞと。この森林保全活動に関しては自分のためだけの活動ではありませんね。だから、ボクが死んだ後も意思を継いでくれる若者をこの活動を通じて育てています。

——自然エネルギーに関して、一番進んでいると思われる国はどこですか。

坂本 自然エネルギーの実用で今一番進んでいるのは、実は中国なんです。発電の量からいえばダントツではないでしょうか。一方で原子力発電所も50機、100機と製造しているわけですが。ただ、これからどんどん自然エネルギーへと移行していくことになると期待しています。彼らがそのリーダーシップを取るかどうかは分かりませんが、人口の多い中国やインドが早く自然エネルギーに移行してくれなければ、九州はいつまでたっても被害を被るわけですから。

——多くの企業が環境への配慮を利潤の次に考えているのが現状ですが、その状態について何か思うところはありますか。

坂本 企業は“法人”と呼ばれますよね。要するにそこには人格があると、人間と同等として日本の法律では見なされているワケです。であれば、企業にも人間と同じように倫理的責任が必ず発生します。現在も大多数の企業は環境問題よりも目の前の数字を追いかけることを優先していると思いますが、インターネットの普及で環境を無視できなくなってきています。環境に影響のある行動が見つかるとすぐ世界中に知れ渡ってしまいますからね。だから正直な経営をしていかないと難しい環境にはなりつつあるのかなと感じています。

——では、少し話しを変えて、村上龍さんとの対談で「夢を持つことは良いこと」という風潮に疑問を感じるとおっしゃっていましたが、これはどういうことでしょうか。

坂本 ボクの周りに「こうなりたい!」と思って今それが叶っている人はほとんどいません。したいことを追求した結果、そこに収まったという人がほとんどなんです。夢を追うよりも大切なのは良い友人や先生に出会うことだと思います。良い友人・先生=自分の背中を押してくれる人ではありません。むしろ、油断したら突き落としてくるようなスリリングな人との出会いを大切にしてほしいです。

——坂本さんは今の20代・30代にどんな印象をお持ちですか。

坂本 最近の若い人の中には年長者に「背中を押してください」ってことを言う人がいるんですよ。ボクもそれを言われたことがあるんですが、その時「ふざけんな!」とキレました(笑)。ボクが20代・30代の頃は日本の未来にまだ希望がありましたが、今はそれが見えなくて大変だなとは思います。だからあまり厳しいことは言いたくないんですが……それでも上を乗り越えていくという気概がなければ面白いことはできないんじゃないでしょうか。ただ一方では環境意識の高い人もたくさんいて、着るものや食べるものに気を使っている若い人も多いと思います。そういった方が30代・40代になり社会の中枢で活躍して、今よりもっと環境を考える社会になればと期待しています。(BOND FUKUOKA 10掲載分)

[ 坂本 龍一・さかもと りゅういち ]
1952年東京都生まれ。東京藝術大学大学院修士課程修了。1978年「千のナイフ」でソロデビュー。同年イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)を結成し、世界的な成功を収めるも83年散開した。一方で映画『戦場のメリークリスマス』で英国アカデミー賞音楽賞、87年『ラストエンペラー』でアカデミー賞作曲賞、ゴールデングローブ賞最優秀作曲賞など数々の音楽賞に輝く。1999年に制作したオペラ「LIFE」の公演以降、自然エネルギー利用促進を提唱する団体「artists’ power」、温暖化防止・植樹を啓蒙(けいもう)する「more trees」などといった環境活動に多く関わる。2006年音楽レーベル「commmons」の立ち上げ後、5年ぶりとなるニューアルバム「out of noise」を発表。現在、札幌国際芸術祭2014(7月19日~9月28日)のゲストディレクターとしても活躍中。

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