九州・沖縄発 一流のオトナを諦めないあなたに贈るフリーマガジン変革をあきらめないオトナたちへ BOND

九州・沖縄発 一流のオトナを諦めないあなたに贈るフリーマガジン変革をあきらめないオトナたちへ BOND

篠山 紀信 ラストボンド INTERVIEW

“人生に良い時代なんてものはない”

常に時代とコミットし、今の姿を映し出す稀代の写真家・篠山紀信。
そんな篠山氏も写真家として今年で50年目を迎えた。
氏が50年間かけてファンイダーを通して見た人生とは、
そして時代とは、どんなものだったのだろう。

以下、篠山氏 ー 僕が写真家を目指したのは、第一志望の大学受験に失敗した時。
普通ならそこで浪人するんでしょうけど、何のために浪人するんだろうと思ってしまって。そんな時、新聞に日大の写真科の広告があって、これから写真を職業にするのがいいんじゃないかと……もう、勘なんですよ。それまで写真に興味なんてまったくなかったんですけどね(笑)。

当時、僕は写真をアートや表現の手段として選んだわけではなく、職業として選んだんです。なので、大学と併行して写真の専門学校にも通いました。もう、やると決めたら、それを徹底してやる。それが覚悟だと思いませんか。

専門学校に入ってからは一瀉千里、写真に没頭していましたね。こうして商売をするために写真の世界に入ったわけですが、写真を撮り続けていくと表現することの面白さに気付きました。特に写真をはじめた60年代の日本は高度成長期の真っただ中で、混沌としていましたからね。アートな作品を撮りはじめたのは「表現」の面白さに気付いてからなんですよ。

ちなみに僕から人生のアドバイスなんてものはありません。50年間、写真家をしていますが良い時代なんてないんですよ。生きてるってことはろくでもないし、疲れる事なんです。現在、政治も経済も不安定で先行きが見えないとよく言いますが、僕は不安とは常に戦っていなきゃいけないと思います。

そうしないと、特にモノを創る人は満足するとモノを生み出せなくなりますから。先ほど「表現」は面白いと言いましたが、正確には面白いけど辛いんです。ですが、自分がヒリヒリと時代に接しているからモノが生み出すことができるわけです。結局、何をするにしても覚悟を決めて懸命に打ち込むことが大切なんですよ。

僕には「あの時代に帰りたい」なんて時代はありません。帰ったってそれはそれで大変でしたからね(笑)。きっとこれから先も大変なんです。だから、しかたないかもしれませんが、今を懸命に生きなきゃいけない。

「人生に良い時代なんてない」とは、なんと超越した言葉だろう。一見、ネガティブな言葉に聴こえるが、その裏には今を生きる人たちに向けた最大のエールが込められている。さらに篠山氏は「福岡を知りたいなら、福岡を出ろ」と言った。自身が東京生まれで東京育ちのため、地方から東京に出るという感覚が分からなかったとか。しかし、年を経てさまざまな場所へ行くと、東京の本質が見えるようになったと話す。福岡をどうにかしたいと福岡で考えるより、外から福岡をさまざまなモノと比較する方がその本質に触れやすいということだ。
時代の瞬間を50年以上も切り取り続けている写真家・篠山紀信氏。覚悟を持って、今を懸命に生きている氏だからこそ、今なお時代を超越した作品を生み続けることができるのだろう。
(BOND FUKUOKA 04掲載分)

[ 篠山紀信・しのやまきしん ]
昭和15年(1940)生まれ。日本大学芸術学部写真学科に在学中、併行して東京綜合写真専門学校にも入学。専門学校を卒業後、日大在学中に『ライトパブリシテイ』に就職する。その6年後、フリーカメラマンとして活躍。樋口可南子のヌード写真集『Water Fruit』、宮沢りえのヌード写真集『Santa Fe』などは今も伝説となっている。

BOND OFFICIAL
BOND OFFICIAL

記事一覧

BOND GIRL