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外尾 悦郎 インタビュー INTERVIEW

ガウディを見るのではなく彼の描いた未来を見つめることで、
また一歩ガウディに近づく

1882年に着工し、主任建築家のアントニ・ガウディが不慮の事故で亡くなってから今に至るまで着々と工事が進められているスペイン・バルセロナのサグラダ・ファミリア(聖家族贖罪教会)。その主任彫刻家に就任し「ガウディの心を最も深く受け継いだ男」と呼ばれる外尾悦郎氏が、ガウディの意思をどう理解し今何を伝えようとしているのかに迫ってみた。

—今回お会いして、まず伺いたかったのが(アントニ・)ガウディの考えていることがわかった瞬間についてなんですが、何かきっかけや出来事などがあったのでしょうか。

外尾悦郎氏(以下、外尾) 十何年もサグラダ・ファミリアの彫刻家として活動して、ついに(サグラダ・ファミリア建築についての)資料がなくなったとき、いよいよ仕事を辞めなくてはいけない……と覚悟する時期がありました。その時、自分はこんなにも一所懸命ガウディを見ているのに、ガウディは私をこれっぽっちも見ていないことに気づいて。見ていないどころか、むしろきっと彼は他のところを見てせせら笑っているんですよ。そう考えた瞬間、「ガウディが違う場所を見ているなら、ガウディが見ている方向を見てみよう」と思ったんです。それまでガウディに誰よりも近づいていると自負していましたが、どうしてもガウディとの溝が埋まらないと感じていました。ところがガウディの見ている方向に目を向けたとき、スーッとガウディが自分の中に入ってきたんです。つまり、誰よりもガウディを見続けていたことが、結果ガウディとの溝を作っていたわけです。ガウディへの理解が一層深まったのはそれからです。会社組織に関しても全く同じで、会社の上司ばかり見ていても良いチームはできないし、良い仕事もできません。上司の見ている方向を共に見ることが大切です。

—では、外尾さんが見た「ガウディの視線の先」には何があったのでしょうか。

外尾 ガウディは“総合”を見る目「天使の目」を持っていたように思います。だからこそ本当の意味での合理性を求めていました。今、私たちが使う合理性は自分たちが持っている方法の中から出ないことを目指しているように思えます。しかし、ガウディは目的のためには方法をいくらでも変えることが合理性だと説いているのです。例えば、図面に起こしやすいからという理由で四角形の建物を造るのではなく、立体の為には立体模型で考えるのが便利だということです。人類はこれからの本当の意味での合理性を考える必要があると思います。それは皆が幸せになるため。ガウディは生涯幸せを求めていましたが、本当に自分が幸せになるためには他人を幸せにしなくてはいけないということを知っていました。

—では、外尾さんがサグラダ・ファミリア完成という途方もないプロジェクトに参加された理由は何なのでしょうか。また、そもそもあのプロジェクトがなぜ今もまだ続けていくことができるのでしょうか。

外尾 それはリーダー(=アントニ・ガウディ)の志の強さではないでしょうか。自分のことしか考えないエゴイストのリーダーではどんな会社も組織も永くは続きません。ガウディは当時50万人いたサグラダ・ファミリアの信者のために、この教会を建てました。それは世界中からサグラダ・ファミリアに集まる人のためでもあります。この大掛かりな事業はガウディ自身のためにしているのではなく、私たちのために彼がはじめたのです。その想いが今も伝わっているから、このプロジェクトが続けられているのだと思います。こういったガウディの想いは図面には残されていません。しかし、彼の意思を受け継ごうと皆必死に探します。自分で探して見つけた答えは何よりも価値があることをガウディもわかっていたので、あえて図面を残さなかったようです。人を活かすなら、細かい道標は必要ありません。大きな道を作るだけでいいんですよ。

—最後に一つだけ伺いたいのですが、当初のガウディのデザインはわりと直線的だったように思います。しかし、このサグラダ・ファミリアを見るとほとんど直線がありません。これはどんな心境の変化があったと思われますか。

外尾 ガウディはいつも直線で曲面を造るのです。人間の単純さと社会の複雑さを良く知るガウディだからでしょう。(BOND FUKUOKA 12掲載分)

[ 外尾 悦郎・そとお えつろう ]
1953年、福岡生まれ。京都市立芸術大学美術学部彫刻科を卒業後、中学校・高校定時制の非常勤講師を経て1978年バルセロナに渡る。同年、サグラダファミリア(聖家族贖罪聖堂)の彫刻を担当。2000年主任彫刻家として生誕の門の「子供たちの合唱隊」を完成させる。2005年には外尾氏が手がけたサグラダ・ファミリア「生誕のファサード」が世界遺産に登録。受賞歴は福岡県文化賞受賞、リヤドロ・アートスピリッツ賞受賞、日本国外務大臣表彰受賞、国際カトリック文化賞ゴールドメダル受賞など。現在、「世界で活躍し『日本』を発信する日本人」の一人として全国で多数の講演会に呼ばれるなど、多忙な毎日を過ごす。

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