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今年は、大牟田の奇祭「大蛇山まつり」で「神様」の化身に会いに行く。 LIFE


日本各地にある祭り。中でも日本を代表する祭りは、何百年も前からその地に根付き、そこに住む人たちによって受け継がれてきた。しかし昨今では、少子化や核家族化の影響で“祭り離れ”が深刻になっている。市制100周年を迎えた大牟田市最大にして、正に奇祭、「大蛇山まつり」は、現在も多くの地域住民が参加し開催される希有な祭りの一つ。彼らはどんな努力をし、現在に至るまでその伝統を受け継いできたのだろうか。その疑問を「大蛇山まつり」の担い手の一人で、大牟田祇園六山振興会会長の熊崎俊春氏にぶつけてみた。

 


歴史の真実を伝えること
それが一番大切

熊崎会長は現在、「大蛇山」の起源や歴史について正しい知識を広めるべく、依頼を受けては講演会などを行なっている。
「大蛇山の起源は、実はつい最近まで大牟田市三池地方に伝わる民話『ツガニ伝説(蟹の恩返し)』にあると思われて来ました。この民話は、街を蹂躙する大蛇を、ツガニが二つのハサミで3つに切って『三池』となったというもので、地元では広く語り継がれて来たお話です。しかし、文献などが乏しい中、先輩方の資料や専門家の話を聞いたりして調べて見ると、民話と大蛇山が全く関係ないことがわかります。我が国には、農業などに水が大切なことから、蛇や龍を水の神様の象徴とする『水神信仰』がかなり古くからありました。また、江戸時代初め、三池藩立花氏・柳川藩立花氏により悪病除けと雨乞いへの強い祈願が込められ、祭神を悪病除けや農業の神とする『祇園』のお宮が造られ、人々にも『祇園信仰』が広まりました。三池祇園の大蛇山は、こうした、『水神信仰』と『祇園信仰』の二つの要素が絡み合い、やがて、祇園の祭りに大蛇が取り入れられたことで『大蛇山』が出来上がったと考えられます。つまり三池藩主立花公が領内に建立した祇園信仰の神社・三池新町彌劔神社が大蛇山のルーツなんです。こういった歴史的背景を知ることで、誇りを持って祭りに参加できると私は考えます。もし、蛇が人間の敵だとして描かれている民話がルーツだと勘違いしていたら、蛇を勇壮に作る意味がわからないはずです。市制100周年を迎えた記念すべき年なので、この真実を一人でも多くの人に伝えていきたいのです」。


花火や煙を吐くのにも
きちんと理由がある

この勇壮な大蛇山祭りを見るなら、ぜひチェックしてほしいポイントがあると熊崎会長はいう。まずは全長 m、重さ400kgにも達する「大蛇」。その構造は、先頭に全長4mもあろうかという巨大な大蛇の「頭」。そして祭りの参加者たちが乗り込む「胴体」の部分、そして同じく全長4mを超える、巨大な「尻尾」は3つに分かれている。この構造が、恐怖すら覚えるような大迫力の大蛇の動きを再現しているのだ。そして、祭りのクライマックスには花火や煙を吐くという迫力の演出がなされる。この花火や煙を吐くのにも歴史的な理由が隠されていた。「花火で演出される炎は、田畑の害虫駆除のためとして、これは『五穀豊穣』を祈願したもの。そして、大蛇が吐く大量の『煙』は、その煙を家の戸口より入れることで『一年間の不浄と悪を払う』という『無病息災』と『家内安全』を祈願したものなのです。」と熊崎会長。つまり、この大迫力の大蛇山自体が、祈りの象徴なのだ。その証拠に、当時貴重だった「火薬」の使用を時の三池藩主は許可していたのだ。江戸時代に一般市民が火薬を使うことは異例中の異例。そのしきたりが現代に至っても、残っているのだ。


時代を超えて受け継がれる
奇跡の祭り「大蛇山」

そんな伝統を今に受け継ぐ「大蛇山」に熊崎会長は、どんな思いを託しているのか。
「昔と違い、今はたくさんの娯楽があります。そのため人と関わる行事を面倒だと感じてしまう時代です。若い人が祭りから遠のくのは仕方のないことかもしれません。大蛇山も祭り離れをどう打開するかが今後の課題となっています」と熊崎会長は話す。どの地方都市もが抱える悩みを、ここ大牟田も抱えているのは確かだ。しかし、熊崎会長は「国内には蛇を『神事・ご神体』にした祭りは、全国に5ヶ所程度。また、蛇を山車に乗せて街中を動き回るという、昔の祭りの原型を留めた奇跡的な祭りなのです。しかも、古来からの日本の祭りの3要素とされている『動きがある』『音がある』『明かりがある』はもちろん満たしてますが、この大蛇山祭りは生きた光がある。つまり、本物の火薬(花火や煙幕)を、惜しげも無く使い演出するという、現代では凄いお祭りなのです。現に、今年、惜しくも雨で中止となった『博多どんたく港まつり』パレードでは、安全のため二酸化炭素の煙幕となっているんですから」。

やはり、この夏は、大牟田まで足を運び、大蛇山祭りの真の姿を目の当たりにし、勇壮にして、神聖な祈りに満ちた祭りの存在価値を確かめてほしい。


Omuta Daijayama festival History

世界遺産にも名を連ねる大牟田市・三池の見どころと祇園六山が奉納される神社。

左上:現役の港でありながら、2015年5月4日にイコモス(国際記念物遺跡会議)からユネスコへ世界遺産リストに記載勧告がなされ、長崎造船所などと共に日本の稼働資産としては初の世界遺産登録となった三池港。左下:三池炭鉱の中でも最も出炭量が多かった宮原坑。三池炭鉱全体の28%を宮原坑が担っていた。

1~6は大蛇山を祭礼行事として奉納する祇園神社 [1]三池新町彌劔神社 [2]三池本町祇園宮 [3]本宮彌劔神社 [4]諏訪神社 [5]三区八劍神社 [6]大牟田神社第二区祇園


Daijayama

絢爛豪華な蛇が町を練り歩く姿に、大牟田人の熱い血を感じることができる。

全長約15m、重量400kg以上という巨大な蛇は、稼働させるため頭・胴・尻尾と3つに分かれている。毎年氏子たちに制作される大蛇は、入魂式を行った後、祇園の祭礼として奉納される。御神体である大蛇の口に子供を“かませ”ると1年間の無病息災が約束され、泣けば泣くほどご利益がある。

大蛇山祇園六山 [1]三池本町祇園宮 [2]三池藩大蛇山三池新町彌劒神社 [3]本宮彌劒神社 [4]大牟田神社第二区祇園 [5]三区八劍神社 [6]諏訪神社

おおむた『大蛇山』まつり振興会

大牟田市新栄町10・1 西鉄新栄町駅1階テナント内
☎0944.57.6330

www.omuta-daijayama.com

BOND 編集部

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