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「つどい」店主ギュウさんが捉える飲食の未来 FUKUOKA

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つどい

今回話しを伺ったのは、東京の友人が福岡に来るとなれば必ずと言っていいほど「連れて行け」とリクエストする「つどい」の店主・ギュウさん。この店は昨年東京進出でも話題となった「二〇加屋 長介」の裏手にある。元々長浜にあったが、借りていたビルの契期満了のタイミングでこの場所へ移転したのだとか。それにしてもなぜこんな奥まった場所を移転地として選んだのか。薬院といっても、駅から少し離れていて「歩くのが嫌い」という人が多い福岡ではマイナスに感じる。ちなみにこの店は「麺屋」というテイだが、メニューに書かれているのは「汁ありのアレ」「汁なしのアレ」「ソレ」など一見して分かるものはない。ただメニューに関しては、実際に訪れて答え合わせすることをおすすめする。

「喫茶つどい」を受け継いで

「つどい」という店名は知る人ぞ知る新長浜ビルにあった「喫茶つどい」の名残だとギュウさんは話す。
「喫茶つどいの店内はとてもカッコよくて、木を貼り付けた壁や趣のあるカウンターがありました。私がそこで店をする時も店内の骨格はほとんど変えなかったですね」。80年代が好きだと話すギュウさんは、店づくりにもとことんこだわるようで、現在の店も昭和初期にあったようなポスターを貼るなどノスタルジックな雰囲気を醸し出している。ちなみに長浜時代の最初の3年間は「海鮮角打ち つどい」として、魚介を使った料理を中心に出していたそう。その後、料理人の退職を機に「数百円で食べられるものを」と、化学調味料を使わない麺料理・あさりそばを開発した。それからビルの契約期間が終わり薬院に移転するわけだが、以前の料理が店やエリアの雰囲気に合わないと全てリセットする。
「あさりそばは人気の商品だったのでお客様もついていたんですが、せっかく店が新しくなるんだったらいい意味でお客様を裏切りたいと思ったんです。ちょっと変えたあさりそばを出すことも考えたんですが、それじゃあ想像の範囲を超えないので中途半端に続けるのではなく、インスタント麺のオマージュという全く新しいメニューに変えました」とギュウさんは話す。すごいチャレンジをしているので元々そういう性格なのかと聞くと、これほど思い切った決断は人生で初めてだったと笑っていた。

立地と差別化

少し奥まっているとはいえ、薬院は飲食店の激戦区。ただの「麺屋」では、すぐ他店に取って代わられてしまう。そんな中「つどい」はどんな風に差別化を図ったのだろう。
「まず、考えたのは昼はないということ。日中はそれこそ競合店がたくさんあります。だから夜の店にしようと考えました。それと1軒目の店でもないと思ったんです。1軒目の店にしようと思うと万人受けするメニューを出さないといけない。でもそうするといわゆる普通の店となってしまう。だから2軒目、3軒目で使ってもらう店にしようと思ったんです。それとこういう立地ですがら、お客さんが雰囲気を作れるような店にしようと。幸いNONCHELEEE(ノンチェリー)さんやKYNE(キネ)さんといったSNSでも影響力のある人が周りにいたので、彼らが発信したことで客層も何となくアート寄りになったんだと思います」。ゆるい空気感のある「つどい」だがギュウさんは中々に戦略家で、場所にあったメニューと時代にあったリーチで確実にファンを増やしているようだ。だからといって店の規模を広げようという気はさらさらなく、ある程度好きなことができて食べていければそれでいいというのがギュウさんのスタンス。その余裕がまた人を惹きつけるのだろう。

オシャレな店より染みる店

最近できる店は小綺麗でオシャレでカフェみたいに気軽に使える場所がほとんどというのが何となくの肌感としてあるが、それについてはギュウさんも同意見だった。そろそろスクラップ&ビルドという考えはどうにかならないものだろうか。海外では古い建物を残しながら中身を変えるというのがスタンダードな考え方。どんなに都会でも海外なら不意に築百年以上の建造物に出会うことも少なくない。日本にもそういう考え方にシフトしてほしいとも思うのだが、飲食業界ではなかなか難しいようだ。
「少なくても飲食店はキレイでオシャレで新しい空間が求められているんだと思いますね。私みたいに古いものが好きみたいな人は全体の1割もいないんじゃないかな。また飲食店の格付けもお客様の意識からは無くなっているのかもしれません。例えば老舗の割烹に行っても、1・2品のオーダーでカフェのようにゆっくり過ごす方もいるそうです。そんな状況もあり、某和食店は女性だけの入店を断るようになりました。こういった状態が広がると、どんどん昔ながらの店はやりづらくなり無くなってしまいますね。そこに通っていたお年寄りたちは、どこに行くんだろうと要らぬ心配までしてしまいます」とギュウさんは憂う。彼が目指しているのはオシャレで小綺麗な店ではなく、ネオンの下でひっそり佇んでいるような心に“染みる店”だ。暇があれば各地にあるそういう店を訪ねて刺激をもらっているようだ。
「以前行った神戸の新開地という場所には、まだ昔ながらの染みる店がたくさん残っていてかなり刺激をもらいましたね。あと鳥栖駅の周辺にもヤバい店がちらほらあるんですよ」と話すギュウさんの目は子供のようにキラキラしていた。

今面白い、平尾二丁目

そんな“染みる店”マイスターのギュウさんが福岡で今注目しているのが平尾二丁目エリア。この場所には昨年末惜しまれつつ65年の歴史にピリオドを打ったバー「山想」を中心に、知る人ぞ知る名店が軒を連ねている。さらにこのエリアを面白くしているのは若手店主の登場だ。
「昨年『山想』さんは閉店しましたが、その場所に当時の雰囲気を残したサンドイッチのお店『vollmond』さんが2月にオープンされています。夜はバーもされると聞いているので楽しみですね。この辺りはそういう店が多くて、若い店主が古いお店や家賃の安いアパートの一階を借りて店をやっているんです。もちろん古くから愛されているお店もきちんと残っていますし、すごく雰囲気がいいですよね。こうやって新しい世代と古い世代が上手く交わって自然に人が集まる場所になっていく状況は、本当に理想的だと思います。最近では平尾二丁目に観光客が来ることも少なくないみたいですよ。ひと昔前なら考えられませんよね。イベントで人が瞬間的に集まるのもそれはそれでメリットはあると思いますが、今まで地元の人しか来なかった場所に面白い人が店を出して、それが面白いと感じた人が店を出す。そうやって店や人が集まる場所になっていくのはいいなぁと思います」とギュウさんは話す。

10年超前から20代が飲酒しなくなったと言われているが、ギュウさんもそれは実感していると話す。「つどい」に訪れるのもほとんどが30代以上で、よく飲むのは30代後半からだそう。しかし、今飲まない20代の彼らが30代になって急に居酒屋やバー通いをするだろうか。そういった不安はどの飲食店も抱えているようで、ギュウさんもこれからどうなるか全くわからないと困惑していた。とはいえ「つどい」のように客に店の雰囲気を作らせるというコミュニティのプラットフォーム的な店も登場していて、飲食店も時代に合わせて変化しているのだと実感した。また、平尾二丁目のように新しい店と古い店が上手く交わり、新たなコミュニティを形成しているエリアもある。こういった新旧の入れ替わりが自然とできる地域が増えれば福岡はもっと面白くなるだろう。ギュウさんを筆頭に、飲食店から福岡を盛り上げて欲しい。

BOND 編集部

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